初めての筆界調査委員業務
長崎支部 井手 義和
新たに不動産登記法に規定された筆界特定のための調査を行う筆界調査委員に任命され、法務局長より辞令の交付を受けた。
事前に会の研修会にて講義を受け、また若干の参考資料等に目を通してはいたが、実際に業務を行うとなると中途半端な知識では通用しない。改めて関係法令、通達、研修会資料及び記載例等で語句の意味、必要書類、記載要領、手続の流れ等を確認した。
そうこうする内に、法務局より「対象土地○○○番についての筆界調査委員に指定する」との指定書と共に申請書の写し及び資料一式送られてきた。申請書には「対象土地、甲地、乙地、関係土地1」等目新しい言葉が並んでいる。もう一度それぞれの言葉の意味を添付図面と照合しながら確認をする。そして問題の概要を把握する。
筆界とは通達(2760号以下同じ)に言う通り、その土地が登記された時に定められたものであるので、甲地乙地の筆界がいつ定められたかを調べる必要がある。分筆合筆の有無、もし有ならその時の資料、無ならばその筆界が定められた時期、公図、土地の歴史等を調べる。
一通りの資料は法務局で揃えてくれるが、更に必要なものがあればその要請には応じていただける。
さて実際に案件に対応するために自分なりに次の事項をしっかり押さえることとする。
- 対象土地、関係土地の歴史
- 公図との附合状況
- 登記面積と実測面積との対比
- 現況平面図の境界の状況と関係人の認識
- 現地地形及び地形変更の有無
- 各土地の占有状況
当然現地調査を行うことになるが、今回は関係者からの意見聴取の期日を兼ねて行われた。これは筆界特定登記官の主導のもとに行われるが、関係者への連絡等はすべて法務局の方で行ってくれる。
第1回目は申請人(甲地所有者)及び代理人(土地家屋調査士)の立会いのもと申請内容の説明と意見を聞いた。筆界特定登記官も筆界調査委員もいろいろと質問をして状況の把握に努めた。
第2回目は相手側(乙地所有者)の立会いにより同様の調査を行った。
今回の事案は、現地に古い石垣がかなり明確に残っていたので判断が容易であったが、このようなことはおそらく稀であり、筆界特定の困難な事案が多く申請されるであろう。調査委員の苦悩する姿が今から想像される。
今回は2名の調査委員が指定され、意見を交わしながら対応したので大変心強かったが、今後は1人だけの指定もあるそうで心積もりをしておく必要がありそうだ。
最後に筆界特定意見書を提出することになる。この意見書は筆界調査委員がその調査に基づき特定すべき筆界につき意見を述べるのであるが、説得力のある根拠を示し述べなければならない。ここに土地家屋調査士としての力量が表れる。筆界特定登記官を納得させるものでないといけないし、後日、特定された筆界につき訴訟が提起されることもあり得るので、そのことも想定し綿密な理論構成を心掛ける必要が大である。
意見書は法務局より示されている記載例を参考にして作成すればよいと思う。今回は意見の内容(筆界調査委員の出した判断)及び意見の理由として
- 申請人の主張
- 対象土地の占有状況
- 地図等の図面の状況
- 地積測量図の状況
- 公簿面積及び実測面積
- 結論
意見書に添付する図面については通達に規定があるのでそれによるべきであるが、今回は通達なお書きの規定を援用し、申請人が提出した図面を利用して作成した。
かくして初めての筆界調査委員の仕事は終了した。後日法務局の掲示板に本件筆界特定の公告がなされているのを目にした。
今思い返すと何もかも手探りで、筆界特定登記官や法務局職員の指導をいただきながら業務を行ったが、自分自身の知識のなさや思慮の足りなさを痛感し満足のいく仕事をしたとの思いには程遠い。もう一人の委員に助けられやっと終了したというのが本音である。
続いて2件目、3件目の指定が舞い込んできている。錆びた頭脳に油を差しつつ何とか勤めを果たして行かねばならない。早く全調査士が筆界調査委員に任命されることを祈るばかりだ。
